現代昔話 おしゃれな娘

むかしあるところに

とてもおしゃれな娘がいました

身分の高い人でしか着ることの出来ない絹の着物を

普段着のように着て見せびらかすように町に出ました

町の人はいつものことと見飽きていましたが

娘は一向に気にすることもなく歩いていました

娘の父親は町一番の大店でお金持ちでした

だから娘は贅沢三昧の暮らしをしていたのでした

だ

た年頃になってもなかなかよい縁談がありませんでした

それもそのはず大店に娘にひけを通らない男なんかいなかったからです

人の口に戸は立てられぬと言いますが町の人はそんな娘を馬鹿にしていました

裕福な暮らしをしながら嫁にも行けぬと妬んでいたのです

ちょっと可愛そうな気がする人も中にはいましたがなにも言えませんでした

 

あるとき娘が出かけたときに突然にわか雨が降ってきました

雨宿りにと貧しい家の軒先を貸してもらうことにしました

中から子どもの忍び泣く声が聞こえてきます

「心配しなくとも大丈夫。きっと良くなる」

「でもこんなに熱もあるし薬もない」

「流行病(はやりやまい)だから、少ししたら熱は下がるよ」

「お金もないからお医者さんには見せられないね」

どうも母親を看病している兄と妹のようでした

雨が上がり娘は静かにその家を後にしました

 

翌日兄妹の家の前に薬草が置いてありました

二人は誰が届けたものかは知らないけれど

すぐに薬を煮出して母親に飲ませました

流行病に効く特別の薬草だったようです

噓のように熱は下がり翌日には病気も失せて元気になりました

 

あるとき娘はふらっと出かけていきました

川の近くの貧しい家の前で幼い兄弟がなにやらしています

不思議に思って物陰から見ていると魚をさばいているようです

「グチャグチャになっちゃたよ」

「鍋もないし焼くしかないよね」

「おっかあに謝って食べてもらおう」

家で流行病で寝込んでいる母親の咳き込む音がもれています

兄弟はもらった魚を病んでいる母親に食べさせようとしていたのです

 

翌朝家の前に鍋と薬草が置いてありました

母親は誰が置いていったのか感謝しながら子どもたちに言いました

「これを鍋に入れて煮るんだよ。そしてその汁を飲ませておくれ」

翌朝には母親は起き上がれるようになりました

兄弟はその様子を見てにっこり笑いました

 

ある日娘は地味な着物を着て出かけました

だれもおしゃれな娘とは気がつきません

娘は町外れに立つお地蔵さまの前に薬草の束を置きました

お地蔵さんをお参りに来た貧しい村人がその薬草を見て驚きました

そこは貧しい人しか住んでいない所でした

お地蔵さんからのご慈悲だといって大事に抱えて村に戻りました

ここでも流行病で多くの大人や子どもが苦しんでいたのです

娘は木の陰から見ていると戻ってきた村人が大声で叫びました

「お地蔵さんからたくさんの薬が届いた。信心が叶った証拠だ。ありがたいありがたい。さあ薬を作ってみんなに飲まそう」

翌朝娘が行ってみると村人には笑顔が戻っていました

 

だれが貧しい人を助けてのかわかりませんでした

相変わらず娘はおしゃれな着物を着て町に出歩きます

憎々しい声も耳に入りますが決して恨むことはありません

町で見かけた困ったことや人を見ると誰にも知られずに徳を施したのです

しばらくすると貧しい人たちからこんな声が聞こえてきました

「この町には御仏さまがいらっしゃる」

「どんなか困っていても必ず助けてくれる」

「この感謝の気持ちを大事にしなきゃいけない」

「しあわせはみんなと分け合わなければならない」

「おらたちでもできることは必ずある」

そういって町の困りごとを引き受ける人がたくさんいるようになりました

悪口なんぞ言っている人こそ惨めさを味わっていたといいます

 

娘が撒いた種はこうして幸せを呼ぶ花に育っていつか実を結んでいくのでしょう

娘はというと相変わらずおしゃれをしていますが

心の根の優しさを誰かに覚られたようです

近い日にその人とばったり出会うかも知れませんね

 

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