現代昔話 ことばが消える

むかしむかしのことです

突然ことばが消えました

 

いつものように挨拶をしていたふたり

「こんにちは 今日もいい天気だね」

「こんにちは ほんとに今日も●つくなるね」

「●したも ●つくなりそうだね」

「なんか変なことばづかいだね」

「そうだね ひとつ何かたりなくなった」

二人は首をかしげました

 

別の所でもおかしなことが起こっています

「●んたの言ってたことほんとっだたよ」

「●んまり信じていないようだったね」

「すまんすまん ●やまるよ」

「いやいや こっちも向きになって ●れこれ言ってしまった」

「●れなんだかことばがおかしい」

「ひとつ音が抜けている」

二人は首をかしげました

 

また売り子にもおかしなことが起こっていました

「●まい●まいおまんじゅうだよ」

「ほんとにおいしそうなおまんじゅうだね」

「一個もらおうか」

「まいど●りがと。えっなんだか変なこといってるみたい」

「そうだね 間の抜けたおしゃべりみたい」

笑いながら二人は首をかしげました

 

神社の境内で若い二人連れにもおかしなことが起こってます

「うん おら●んたのこと好きやねん」

「●たいも ●んたのこと好いちょる」

「これって ●いっていうんだべな」

「なんかことばおかしくない」

「大事なことばが抜けている」

せっかく好きだと告白しているのにムードが台無しです

 

「あ」という一文字が消えてしまったんです

大事な感謝の言葉も「●りがとう」になってしまいました

「●いうえお」のはじまりが始まりません

「●そぶ」では何のことかわかりません

「●かい」も色ではなくなりました

「●め」が降ってきても伝えられません

「●かり」ではなく熊でも狩りに行くのかと間違えます

町中のみんな困ってしまいました

 

次の日またまた事件が起こりました

言い争いをしていた二人の会話がトンチンカンになってしまったのです

「お前が悪いんだ。先に●やまるのはおまえだ」

「ふざけるんじゃない。悪いのはお前だ。この●●ったれ~」

「何言いやがる。この●●ったれ~」

「いい加減にしやがれ。この●●ったれ~」

「もう許さねえぞ。このこの●●ったれ~」

ったれ~ばかりが聞こえてきて二人は可笑しくなって笑い出しました  

 

他の場所でも争いごとが起こっていました

やはり言い争う二人がいつの間にか笑ってしまうのです

どうも相手をなじったり汚いことばを吐くと音が消えてしまうのです

ことばがまるで生きてるかのように何かを知らせています

 

ただひとりだけ「ことば」が消えない女の子がいるというのです

さっそく世話役が会いに行きました

「●んただけがちゃんと話せるというのはほんとかい?」

「あたいはあんまりよくわからないけどちゃんと話せるみたい」

「うん。ちゃんと聞こえてくる。でもどうしてなんだろう」

なぜこの子だけまともに話せるのか不思議でしかたありませんでした

 

町の人はこれ以上ことばが消えたらどうしょうと心配になりました

なぜこうなったのか知恵のある人たちが集まって相談しました

ことばが消えるので紙に書こうとしましたが書けないことに気がつきました

相談するにもどう話そうか困ってしまいました

そこであの子を呼びにやってみんなの輪に入りました

するとどうでしょう

ことばが消えずに戻ってきたのです

女の子がいるだけでどうして戻ってきたのだろうか

何気ない女の子の一言でハッとしました

うそをついたり悪口を言う人がたくさんいるよね

騙されて泣いてる人やひどいことを言われて傷ついた人もたくさんいるよ

ことばの神様がきっと罰を与えたんじゃないかな

その通りでした

ことばを汚したばかりに人の心も汚れてきたと感じていました

でも大人はだれも正そうともせずほったらかしにして使っていたのです

女の子はきっとそのことを正しく伝えるために選ばれたのだと思いました

 

集まった大人たちはさっそく汚いことばや心を傷つけることばや

意地悪なことばを使わないよう町の人に知らせました

半信半疑でしたが優しいことばや思いやりのあることばといっしょに行動すると

なんということでしょう

消えたことばが次々と生き返ってきたのです

 

ことばを人と人が仲良くするために使うものだと消えて初めてことばのありがたみをしっったという昔の不思議な出来事でした

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