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10月, 2025の投稿を表示しています

魂に叫ぶ

オレの青春そのもの オマエがそばにいたから オレの仕合わせそのもの オマエと出会えたから オレの人生そのもの オマエが生きているから   魂に叫んだ オレをひとりにするな オマエは最高の男だ オマエは誇れる男だ 生きれ! 生き抜け! 魂は応えた 衰えぬ眼力はオレを射る 涙が溢れてオレも泣く 魂の雄叫びを上げた   しばし沈黙の中で覚った 萎みかけた希望は蘇った 3 年の透析で右手の上腕は筋肉を失った 6 月骨盤骨折で入院した 家に帰りたいとだはんをこいた リハビリに移された後症状は悪化した 言葉は出なくなりいまは要介護 5 4 ヶ月の闘病生活いまも続く 医師の診断を妻は拒否し献身的な看護を続ける 妻の日々の病床メモを読んだ   意識は確かに鮮明だった 伝えることのできぬもどかしさに苦しんだ 辛い治療に強靭な身体は痩せていった でっかい大きな手は握り返すこともできなかった 心は逆境に抗いながら苦悶の連続だった   1 ヶ月前見舞った 久しぶりの再会だった 目を見開いたまま驚愕の顔をした なぜオマエがここにいるんだ 不可思議な表情を続けた オレだと分かってくれた 妻はこんな反応を初めて見たと喜んだ   顔が見たくて4時間高速を走った 個室でいた 酸素吸入の管が鼻につけられていた 目を開くとオレがいた オマエは無言で迎えてくれた   ラブレターをベッドの横で書いた オレはオマエの細くなった左肩に手を当てた オマエはこれまで何度もオレの朗読を聴いてきた 読み上げていくうちに感情が高まった オマエの魂に真剣に呼びかけた オレにいまできるのはこれしかない オレはこの声でオマエの魂を目覚めさせたい オマエはいつもオレを受け入れた オレはオマエの熱き友情に感謝した オマエの優しさと強さに憧れた オレはオマエを絶対に失いたくなかった 感極まった 互い涙しながら沈黙した   短い再会の時間だった 妻に伝えた オマエの妻への感謝と生きる望みを オマエの魂は決して...

バズる

何でもありのネット世界 つまらんことでもバズれば当たる こんなことがホントかよ 若者たちには気にかかるらしい   何でもネットで検索自由 SNS で見境なしにバズればおもろい ハズれはゴミ箱すぐ削除 若者たちにはいま受けしかない   何でもわかるネット世界 知らんことでも音声回答求めます 文字なら虫食いする状態 若者たちの会話は意味不明です   何でもネットで検索勘違い ご都合主義のいいとこ取りします クズな情報バズらせるハイセンス 若者たちの文化は理解不全です   何でもかんでもネット頼り いずれ愚かさに目が覚めてほしい 依存症に悩まされいつか自己喪失 若者たちの行く末は誰にも分かりません   何でもかんでもネットが主流 非難中傷山ほどあります 匿名気取って悪口三昧 若者たちにもクズな人間見極めできます   〔 2025 年 10 月 27 日書き下ろし。バズるというネット用語の意味するところは何か〕

時代錯誤が起こる

政治には関心もない ネットでトピックスを拾うだけ SNS で知ったか振りしてる いいねを付ければ参政してるだろう 世論調査も電話なんてかったるい いまじゃスマートフォンでの「 d サーベイ」 いまではそれが常識さ! オレにも来たかとつい嬉しくなっちゃう 何か言いたそうだね?   選挙に行ったことはない 誰か選ぶことすらめんどっちいい 偉そうな顔が並ぶだけで何も知らん 公約って飴玉ぶら下げるだけだろう 飴玉並べるだけならオレでもできそう ただ金がないから立候補は無理か ( 笑 ) 当選するまでが勝負で後は安泰いい商売だ だから家督を継ぐんだろう   選挙ってそもそも何だよ 半数しか行かないってよく聞くね 結果に満足なんかするわけない いまだ口出しする長老も辞めさせられない ただ潮目が変わりそうだと面白がった やるせないけど信頼なんて誰もしてない だからこの鬱陶しい空気を思い切りとばしてほしい ノリだよノリ 悪乗りでも何でも世の中変えるチャンスかな だって何にもないオレにも希望が湧いてくるかも どうあがいてもオレには何もできん みんなそうだろ 世論調査の内閣支持率なんぞ意味ないじゃん 時代錯誤の声があがろうとオレにはよくわかんない 世の中の動きを見ないとヤバいことが起こりそうだって! 不安って誰かにオレのことを預けてるから起こるんだって! 政治に少し関心を持ったことだけでもまずは良しとしよう   〔 2025 年 10 月 27 日書き下ろし。政治に無関心な若者の思いを代弁する〕

国会が幼稚園

度を超した野次に一言 あの国会なに?!幼稚園なの?! 頭悪いんじゃないの?あの人ら。もう勘弁してくれよ   納得しました 国会ごっこ遊びです 他に他意はありません 野次も国会の華だと教わりました 幼児言葉でなければほぼ通じません 語彙が少なくてすぐ揚げ足を取られます 認識不足は当たり前だからへっちゃです ヤバくなったらないことにする得意技で終わりです   納得できません 聞き捨てなりません 大の大人が幼稚園ごっこするなんて 園児はちゃんと言いつけ守ります 年がら年中騒々しいわけではありません 何も知らない騒がしい幼児だと中傷しないでください 幼稚園は教育機関です 道徳レベルはきっと国会に人よりも高いでしょう 間違ったことがわかればすぐに謝れます 人間としては未熟ですが甘えん坊ではありません 自立心も好奇心も旺盛で成長盛りです   納得するしないの問題ではありません 偉そうな人に限ってこんな幼稚なことを言うのです 頭も悪くはありません 園児はとても悲しいです もう勘弁してよとはこっちの台詞です なんなら全国の幼稚園児と署名活動いたします 自分の名前くらいもう書けます 発言の撤回を求めます   〔 2025 年 10 月 27 日書き下ろし。ワイドショウの子だくさんな著名な H コメンテーターの発言は我が子から連想したのであれば、どうぞ叱責されてください〕

亡霊現る

亡霊 現れるんだって 見たことはないけど 未練がましく霊魂が漂う 信じる者には鰯の頭の話かな   亡霊 いや現れたかのように装うんだって 亡霊の思いのままにいたしますって さもさもらしくかしずいて騙すらしい 信じさせればこっちのもんさ   亡霊 都合の良いように出してくるんだ まだ受け入れ難いだけにたまんないらしい ヤバけりゃ亡霊のせいで逃げられる 上手くいけば亡霊も喜ぶという算段さ   亡霊 国を治める仕掛けらしい 信心をたぶらかして継承するという 強い国を作るのに亡霊の力が一番だ 禊ぎなど亡霊の前では屁の突っ張りにもならない   亡霊 見えないものを信心などできるはずはない 亡霊の置き土産など御免被る 温故知新など根っこが腐れば元も子もない 所詮借り物の政治ごっこが幕を開ける   亡霊 せめで人間らしいの魂であればいいのに せめて恩情にあふれる魂であればいいのに 強面(こわおもての)の教条主義もどきが恐ろしい せめて悪い夢ならすぐ醒めてほしい

動かず

なぜか動かずにいる 立ち止まったままだ 動けぬのか動かぬのか 分からないまま突っ立つ   行動の分岐点 思索の苦慮  判断の葛藤  言葉の喪失    求められる真実 人としてのあり方 詩作することの意味 生き方としてのいま   沈黙の時間 思考の深化への問いかけ 表現の方法への見直し 言葉の真意へのアプローチ   黙して語る 己との対話 人と事の洞察 世の不条理への抗い   動きだすしかない 生の声の発露 紡ぎ始めた言葉 綴り始めた詩文   〔 2025 年 10 月 24 日書き下ろし。詩作の意味を何度も立ち止まり考える〕

触れてはならない

触れてはならない 深い悔恨の傷跡 隠し通したい過ち 奥底に潜む恥部 そして傲慢な自己愛   黙らねばならない 悪意に満ちた仕打ち 刻まれた黒い過去 抗えない侮蔑 そして恐怖の恫喝   聴いてはならない 同調を促す甘い言葉 真意を歪める異論 心を冷やす嘲笑 そして糾弾する罵声   従わねばならない 法を盾にした隷従 気概を捨てた懐柔 真理を棄てた欺瞞 そして神を称した戯言   見てはならない 平然とした犯意 異端とする弾圧 貧困への蔑視 そして正義を語る殺戮   負けてはならない 守らねばならぬ無垢なるいのち 継がねばならぬ人間への信頼 変えねばならぬ専制の独善 そして愛と勇気を語り継ぐ文化   〔 2025 年 10 月 23 日書き下ろし。黙認は承認であることの恐怖を知らねばならない〕

魑魅魍魎の世界

ゲゲゲの鬼太郎の世界 でもお化けが可愛い 境港の駅前通り 鬼太郎の仲間たちのブロンズ像が出迎える 夜歩いてみると人っ子ひとりいない 闇夜に浮かぶお化けはやっぱり不気味だ でもなんだか愛着が湧いてくる ラバウルで生き地獄を味わった のんのんばあが語った妖怪たちに救われる 水木しげるは魑魅魍魎の世界を子どもらに見せた   人間が一番怖い 残忍で残酷になれるのか 笑って殺戮できる動物は人間だけだ 悪魔が住み着いたわけではない 抑制された殺しの装置が ON になる 自制した強欲が解き放されていく 魑魅魍魎の世界を堪能する   人間は残忍さに麻痺する 愛憎が嫌悪に傾く 愛への背信は強い憎悪を生む 中傷と卑劣を正当化し責める 感情のおもむくままに破壊する 理性は挫け欺瞞と非難に屈する 魑魅魍魎の世界は牙を剥く   人間は妖怪を超える 恐怖を与えるのは妖怪以上人間未満 生死を握るのは妖怪以上人間未満 文化を根絶やしにするのは妖怪以上人間未満 信仰を歪めるのは妖怪以上人間未満 平和を崩壊させるのは妖怪ではなく人間そのもの 魑魅魍魎の世界は妖怪に姿を模してそばにある 〔 2025 年 10 月 23 日書き下ろし。妖怪以上人間未満で世界は支配されるのか〕

捜し物は何ですか

久しぶりの JR ポケットに入れた切符 下車する駅が近づいた ズボンのポエットを漁る 見つからない 確かに右側に入れたのに 焦る 周りから見れば滑稽極まりない なければ始発からの千円を払わなければ もったいない 数分後ハンカチにくるまったブツがあった 切符は必ずここに入れようと決めた でもきっとまた捜すことになる なぜなら決めたことを忘れるからだ そんなことを繰り返しながら汗をかく 自分で責任の取れることならしょうがない 慰めにもならない言葉に合点がいった   きみの捜し物は何ですか 何をしたいかわからない 何をすべきか迷ってる 何だか気持ちがおぼつかない   どこに向かっていくのか 人生の旅の行く先が見えない 途中下車可能な切符をきみにあげよう   捜し物はきっと向こうからやってくる 旅の途中っていいもんだ 目的がまだおぼろでも何かを感じる 求めたいという気持ちをなくちゃいけない どこかでグッとしてパッとすれば降りるといい 直感もバカにはできないよ   切符はどこにしまったの 右ならきっと希望を持たせてくれる 左ならきっと愛を抱かせてくれる どっちか選んで入れてみてごらん   人生迷い道 きみはまだ自分のことをよく知らない 捜し物はいつも旅の途中で現れる 人なのか出来事なのかわからないけどね 少しずつやりたいことが見えてくる   何度も途中下車してごらん 切符をなくさないよう確かめながら きみの心と知を育てる切符なんだから   〔 2025 年 10 月 23 日書き下ろし。青春は旅そのもの。切符の意味は?〕

詩を奏でる

なんと贅沢なことか ひとり舞台に立つ 自作詩を朗読する   共演者はいない 発するのはひとり 他の音は静寂が遮る   詩は感性のメロディーを奏でる 詩はハーモニーを心に編む 詩は心地良いリズムを刻む   詩の世界を演出する 詩に魂を吹き込む 詩が躍動し絵を描く   共鳴する空間に言霊が広がる 共有する歓喜が観客に伝わる 共感する詩文は生命を授けられた   〔 2025 年 10 月 22 日書き下ろし。詩の朗読は音楽でありたい〕

気色と気色

沈黙が続く 気色(きしょく)を伺う 心の内面を知るのは難しい 顔色を伺う 表情から読み取るしかない 心の色は推し量るしかない   不安がよぎる 気色が悪い 不快感が募る 作り笑顔が薄気味悪い 関わりを拒ばむ 心の命じるままに避ける   気色顔に抗う 尊大さが受け入れ難い 下心が許し難い 取り巻きが利に群がる 歪んだ企みが自ずと知れる 心乱されぬよう遠のく   気色(けしき)があらわれる 顔色を察して意を汲む 態度から意向を読む 成否の判断が求められる 異論ゆえの納得が必要だ 心の動きを敏感に感じ取る   気色(けしき)が危うい 何事か起きそうな予感がする 無関心ではいられない 無頓着では勝手にされる 不気味な流れに手ぐすね引く 心して世の流れに身を置く [ 2025 年 10 月 22 日書き下ろし。高市内閣が発足した。気色がふと浮かんだ]

もどかしい

思うがままにならない 意を尽くしてもままならない 新しきことへの躊躇いか とかく人は変化を拒む もどかしさは己に帰する   思うがままに動かない 手立てを講じてもままならない 理で諭すことへの抗いか とかく人は感情に委ねる もどかしさは己の器量に資する   思うがままにあらわれない 差配を工夫してもままならない 見極めることへの限界か とかく人は成果を求める もどかしさは己の裁量に責する   思うがままに生きられない 自由になりたくともままならない 責任を担うことへの重さか とかく人は不自由さを受け入れる もどかしさは己の甘さに尽きる   思うがままを割り切る したいことへの制約はままならない 情熱は突破口になり得るか とかく人は諦めが早い もどかしさは己の敗北感でしかない   思うがままに生きるには 目的が明確でなければままならない 緻密な思索と沈着な行動力か とかくオレはわがままなのだ もどかしくとも己の声に従うだけだ   〔 2025 年 10 月 20 日書き下ろし。思うがままに生きるには目的がなければならぬ〕

触手をのばす

ザワザワする 胸騒ぎが止まない ブルブルする 寒気が止まらない   ニヤニヤしている 恥も外聞もなく笑う ギラギラしている 強欲さを平気で見せる   ハラハラする 不安が現実になる ドキドキする 期待が大きく外れる   ウハウハしている 不気味さを醸し出す ギトギトしている 裏切りを企んでいる   グラグラする 恐怖に立ち眩む グングンする     抗いからの怒号が湧く   ガツガツしている 餌へ食いつく姿がおぞましい ドロドロしてくる 魑魅魍魎が現れた   フーハーする 荒い呼吸が心を乱す グーハーしている 荒い鼻息が尊大になる 〔 2025 年 10 月 21 日書き下ろし。恥も外聞もなく触手をのばし、今日女性首相誕生か〕

つかのまの夢

幸せの光が眩い 幼子は陽光に眼を細めた 後ろの影はまだ短かった   幸せの匂いかぐわしい 幼子は乳房にすがりついた 生長の影はまだなかった   幸せの時間が瞬く 幼子は笑顔をふりまいた 不安の影が忍び込んでくる   幸せの感情が揺らぐ 幼子は母を求めて泣いた 立った影が濃くなっていく   幸せの分かち合いを知った 幼子の存在そのものだった いつしか影はのびていくだろう   幸せはつかのまの夢だった 幼子はいつか冒険の支度に取りかかった 危うい影がつきまとい始めた   〔 2025 年 10 月 20 日書き下ろし。幼子の生長とその影を描いてみた〕

さりげなく

さりとて佇むだけのこと 律義に構えることもなし 月下に幻の如く浮かびし姿かな   名のなき草の露に触れるだけのこと 濡れて苦にすることもなし 今宵の月に輝く小さき露かな   頃合いを見て動くだけのこと 面白き可笑しきこともなし 雲に隠れしおぼろ月かな   場に馴染まぬ会話だけのこと うみし言葉を飾ることもなし この世の闇を明かす残月かな   遠き浮世の想い出だけのこと 望みも高く退くこともなし 浮かれし未練に月また曇るかな   尽くせぬ欲への憂いだけのこと 口は口心は心とこともなし 所詮叶わぬ夢路に月落ちるかな   さりげなく月宿る秋の夜に想う 心も満たされぬゆえの感傷か それとも安らかなる心境を映すか   〔 2025 年 10 月 19 日書き下ろし。短い秋の夜も更けてゆく〕

臆病であれ

英雄にならなくていい 戦わずしてのうのうとする者たちが命じる 臆病と罵られてもいい 死ぬことを英雄と煽る者たちが命じる 臆病者と脅されてもいい 殺戮することに慣らされてはならない   殺人者として子に誇ることができようか 心優しき者は人殺しを拒否する 臆病と蔑まされてもいい PTSD (心的外傷後ストレス障害)を患うのだ 臆病と揶揄されてもいい 人殺しの罪過からは逃れられない   臆病であれ 用心深く欺瞞を見極めよ 注意深く真実に近づけ 思慮深く状況を確かめよ   臆病でいい 不安を拭いきれず強める 強欲を直感して身構える 正義を欺瞞で歪められる 人間であることを貶められる   臆病な心こそ人を人間ならしめた 臆病な心こそ融和と寛容を求めた 臆病な心ゆえに共に未来を見た   〔 2025 年 10 月 19 日書き下ろし。ガザの平和はまだ遠い。洗脳し扇動する者たちが人間を見くびる〕

蚊帳の外

現実を見極められぬに無能さ 課題に対処できぬ無策さ 問題を先送りする怠惰さ あからさまになる無知 蚊帳の外に置かれる必然   緩慢で見下した態度 誤認した傲慢な分析 想定される想像力の欠乏 あからさまになる失態 蚊帳に外にされた嘲笑   期待に胡座をかく尊大さ 期待を見事に裏切る軽率さ 期待が急速に萎む陳腐さ あからさまになる小心 蚊帳の外にするしかない不信   高学歴を吹聴する未熟 勘違いしただけの才能 おだてられて調子をこいた軽薄 あからさまになる自己愛 蚊帳の外で臍をかむしかない自戒   傍観するだけの無駄な抗い 忌まわしいドラマを見る不快 無条件に明日を委ねる不穏 あからさまになる不条理 蚊帳の外で声を上げるしかない慙愧(ざんき)   〔 2025 年 10 月 18 日書き下ろし。蚊帳の外になるしかない権力闘争の抗い〕

器の大きさ

上辺だけ飾っていた 面の皮だけ厚かった 分かっていない小心者だった のっぴきならないピンチに何もできずにいた 小さなことにこだわり判断を間違えた いちいち人の目を気にかけた さながら蚤の心臓だった 何が何でもやり抜く気力はすでに失せていた   問題を先送りにしただけの器だった 呑み込むには器が小さすぎた がむしゃらに打開する器ではなかった 自ずと力量のない器だと知った 置かれている事態を収束する器ではなかった 気づかれまいと虚勢を張るだけの器だった 苦しくなれば投げ出してトンズラするだけの器だった 見た目だけの存在感は空の器だけが残った   世間の厳しい現実を打開するだけの器を持っていなかった 様子を伺うだけで手立てすらない器を持つだけだった 運が良ければ空っぽの器のままでよかった 突然降って湧いたポジションに器は入れ切れなかった 恥をかくだけの場は小さな器が顕わになった つかの間の夢は器を割って小さな器に替えるだけだった 足りない度量の器を隠しきれなかった 利に拘ったことで器の中の本性がこぼれた 多くの期待は器からこぼれて地に浸みた   可能性はゼロではないがこの器では失望しかない 間違ってもリーダにはなってはいけない器だ 全ては小さな器しか持ち合わせないドングリの世界の話だった   〔 2025 年 10 月 14 日書き下ろし。世間にドングリたちがざわめく〕

和平は道半ば

子どもは未来の戦士だ ともかく根絶やしするしかない ジェノサイドと罵られても構わない 遺恨が残ろうが知ったことか 病院でも食糧配布場でも爆撃する 殺戮を喜ぶ兵士の顔が誇らしい   立ち直らぬよう徹底して破壊する 瓦礫の中で泣きわめく子らの声はかき消される 死骸の異臭が突く壊れた街に茫然と立ち尽くす 母も父も失い自らも負傷した子はどこに向かうのか 意気揚々と高ぶる兵士の顔は昂揚する   和平交渉は幾度も頓挫した より有利な条件を勝者は求める 疲弊した敗者はこれ以上戦えなかった どや顔して和平を実現させたとトランプは嘯いた イスラエルも反戦の世論に抗いきれず妥協した ハマスからの全人質の解放から始まった ただこれだけのことがなぜできなかったのか 勝利を得た兵士は英雄として凱旋する   人間の強欲の限りを尽くした勝利とは何か ホロコーストをガザで再現した勝利とは何か 神の教えを曲解し殺戮を命じた勝利とは何か パレスチナの教育も経済も医療も壊滅させた勝利とは何か 兵士が PTSD (心的外傷後ストレス障害)を発症する勝利とは何か   素朴な疑問だ なぜ人はいがみ合うのか なぜ人は許し合えないのか なぜ人は心に育む美しさに驚歎しないのか   〔 2025 年 10 月 14 日書き下ろし。和平は道半ばだ〕

泡沫の詩編

泡沫の世の移ろいを書き記す あたかも市井の声のように 時代に翻弄される民の本音か 解釈の未熟さを否定しない それでもなお残さねばならぬ   泡沫の詩編はすぐに消える あたかも市井の憤りのように 歴史の審判を待つには長すぎる 時代の変遷を捉えきれない それでもなお憂いの言葉を磨く   泡沫のように一瞬でしかない あたかも市井の代弁のように 生臭い空気を嗅ぐにはひ弱すぎる 抗うことも許されず押し潰される それでもなお湧き上がる言葉を吐く   泡沫であっても怯んではならない あたかも市井の苦渋を呑み込むように 世のきしみに巻き込まれようとも闘う 利権を追う輩に沈黙してはならない それゆえに不正を暴く言葉を求める   泡沫の一滴の泡であっていい あたかも市井に存在した証のように 世の熱き情が廃れようとしている 心が貧しくならぬように守らねばならぬ それだからこそ言葉を詩に託す道に生きる

幸せの鍵

幸せを感じる 寒い日に食べる湯豆腐と熱燗1本 月形の豆腐屋が一番美味い ちょっと買い足ししてお裾分けも嬉しい 豆腐で人が繋がる幸せを想う   仕合わせを感じる 病床にある友との数年ぶりの再会 言葉に出せずに大きく見開いたまなこがいい つかの間の面会時間でも喜んでくれた 祈るしかない仕合わせを念じる   幸せを感じる のっぴきならないピンチ どう判断して良いのか悩むに悩む 察して助け船を出してくれた 地獄に仏こそ仕合わせに導く   幸せを感じる鍵 家族が笑顔でいる 友だちが肩を叩いてくれる 恩師が病魔と闘い続ける 周りがあたたかく気遣いする 仕事仲間がやりがいを与えてくれる   仕合わせの鍵 人に恵まれる 人の優しさにほだされる 人の厳しさに惹かれる 人と心呼吸する   〔 2025 年 10 月 13 日書き下ろし。仕合わせと幸せの違いを意識しながら描く〕  

貧困なる我が魂

このまま朽ちていく 何と遅きに失するのか   人生の終末に気づかされる 何という浅学に依拠していたのか   先の世の動きは全く読めない 何も判断できず思慮を放棄するのか   根拠にした理念は痩せてゆく 何も残さずただ口惜しいのか   貧しき知性は崩れてゆく 何とも当たり前の寂しき結末か   鈍くなった感性がすりへってゆく 何とも受け入れ難い好奇心の喪失か   世の不条理に抗う力を試されている 何もなくなったと諦めるのか   貧困なる我が魂が叫ぶ 何か取り残したと最後のあがきか   貧困であるゆえに赦せないのだ 何が何でも言葉を綴れと命じるのか   貧困なる言葉も時に共感を発する 何としても生きる力を感じねばならぬのか   貧困なる我が魂は彷徨う 何かに憑かれたように言霊を詩に紡げと   〔 2025 年 10 月 13 日書き下ろし。詩作することの意味を自問し続ける〕

お里が知れる

慇懃無礼な言葉を発する 思い上がった態度が目に余る お里を知られまいと背伸びする 教養と知性のギャップが疎ましい   理整然と言葉を発する 感情を出さ冷徹さが目に障(さわ)る お里を隠そうと強弁を振るう  学歴と出世を鼻にかけて粋がる   故事来歴を言葉に乗せる 知ったか振りに目をつぶる お里を知られても平気を装う 素養の貧しさを隠し通す   事実を曖昧な言葉で誤魔化す 嘘偽りに目を剥く お里が知れようが揺るがない 地位と財産を得て高飛車に出る   お里を知る 過去を否定できずに苦しむ お里を知らされる 素性や経歴があからさまになる お里が知れる 劣等感が引き出され強く反発する   人は生まれた環境で生きるしかない 人はどこまでも生臭く自己肯定に動く 我もまた果たして貧困なる知性で生きうるのか   〔 2025 年 10 月 12 日書き下ろす。お里が知れるのはわれもまた同類か〕

狂歌連句「雪も融ければ」

下駄の雪 いつか融ければ ただの水 流せぬ遺恨 別れの言葉   袖にされ ついていきます お情けも 堪忍袋 ついに破れし   用無しと 露骨に非難 耐えて討つ 用無しの用 見事リベンジ    裏金は 秘書のせいだと 皆がいい 開き直って 大恥晒す   安倍の影 漂う先に 見る景色 保守の面々 落選の危機   看板を 据え替えようと 変わり得ぬ 時代錯誤の 戦前回帰   満面の 笑顔に亀裂 走る日の 傷物抱えた しっぺ返しか   皮肉屋の 面々抱え 禊ぎ知る 信の一字が 不信に変わる日   期限切れ 集めて挑む 改革は 古き体質 曝け出すだけ   新鮮味 ただそれだけで 評価する 選びし人の 知見こそ問う   主義主張 隠せぬ本音 騙されぬ 民の思いと 離れるばかり   軽率に 振る舞う態度 一貫す 鹿も泣きます 当て馬にされ   傍観者 ただ野にいてし 利を探る 委ね難し 国の行く末    〔 2025 年 10 月 11 日書き下ろし。 10 日公明党の斎藤代表が自民党の高市総裁に連立からの離脱を宣した。狂句にしたためた〕