外されてゆく人たち
90を過ぎた
認知症も患う
娘が甲斐甲斐しく父の世話をする
だから自宅で生活できる
仕事を持つ娘は週5回デイサービスを利用する
要介護3
昭和一桁は威勢だけはいい
気に入らなければ暴言を吐く
動けるだけに怪我も多い
時々体調不良で入院する
近隣の病院は見切れないと匙を投げる
優しすぎる娘は父を最期まで看たいと
その希望もすでに限界を超えている
近くの施設に問い合わせる
どこの施設も入所は待機中だ
地方の介護施設は職員の確保が難しい
90を超えてもなお入所は叶わぬ
戸惑い悩む娘はどこにでもいる風景となる
去年の介護保険制度による介護費用(介護給付費と自己負担分)の総額
11兆9381億円で過去最多を更新した
前年度より約4242億円(3.7%)増えた
サービス利用者も前年度から12万1900人(1.8%)増えた
675万4千人で過去最多となった
在宅ケアを進めてきた施策は破綻してゆく
美しく描いた地域包括ケアシステムは機能不全となる
介護から外された人たちが地域に漂流する
在宅でも孤独死云々よりも施設に入所できぬことが問題だ
介護保険の利用もサービスの行き届く地域との格差が広がる
保険を払い続けても必要なサービスを受けられない差別が生まれている
金があれば手厚いケアが受けられる経済格差も広がってゆく
安心して老後を迎えるのは限られた者たちに過ぎない
外されて生きる人たちは悲痛な声さえ上げられない
介護が難しい認知症の人たちはさらに外されてゆく
従順にケアされることがもしかして入所の第一条件になるのか
志ある施設はそんな人を抱えて真剣に介護と取り組んでいるだろう
長寿社会が続く中で在宅ケアの困難性はさらに増してゆく
〔2025年10月1日書き下ろし。介護費用の総額は厚生労働省が30日発表した〕