地球への一撃
坂道はまだ凍っていた
蒔かれていた滑り止めの砂も効力を失う
車はスリップを繰り返す
ようやく車庫に入れた
車のトランクからバリを取り出す
地球にバリで一撃を食らわす
凍り付いた大地に春一番の一撃だ
厚手の手袋に強い振動が伝わる
繰り返しバリを打ち込む
アスファルトに張り付いた氷が弾ける
亀裂から攻めて割れ目を広げる
バリはその鋭利な刃で地球を叩く
午後の陽光が差し込む
氷割りが春を迎える風物詩だ
気温はまだ低く手がかじかんできた
辛抱強くひたすら大地に蜂の針を差し込んだ
靴に入った氷片がとけていく
車庫への入口の幅を広げるのに堅雪をぶん投げる
階段の上がり口が滑る
丸みを帯びた斜面がいまは危険だ
ここもバリで氷を叩き割る
やり残し感はあるが砂を撒いて誤魔化す
ここ1週間で水になって流れるだろう
凍えきった指の感覚が怪しい
車のドアを開けよとしてふっついた
ヤバいと静かに指を放した
明日ゲストを招く準備は終わった
娘の家の前での地球との遊びだった
〔2026年3月2日書き下ろし。バリとは大きなくぎ抜きである。氷割りの道具ではない。だから余計に力を要した〕