悲嘆と哀悼の三部作
「断腸の思い」
自死で子を喪った母
その苦しみは
腸が裂ける痛みに喘ぐ
母は痛みから解放されるのか
子の喪失から癒える日は来るのか
母と子の魂は救済されるのか
時が止まった瞬間に
母は抗えぬ悲嘆にいる
子は未来を閉じた
〔2026年3月26日書き下ろし。息子の自死に向き合う母と出会った。何をか語らん。驚愕し言葉を失う〕
「魂の宿る場所に」
衝撃は想像を遙かに超えた
慟哭するしかなかった
死霊に取り憑かれた子を救えなかった
張り裂ける胸を強く打ち続けた
夢であってと嗚咽をあげる
残酷な現実が時間を凍らせる
悔悟が強く支配する
何か出来たはずだ
何が足りなかったのか
何でもっと話さなかったのか
何を躊躇っていたのか
追い詰める母の胸に去来したのは何か
人を疑うことのない純な子だった
人に憎まれるなどあり得なかった
仕事で悩み苦しみひとり抱え込んだ
真面目で優しいがゆえに逃げ場を失った
死に神は母を絶望の淵に落とした
生への執着が断たれた瞬間絶句した
止めようと抗ったが生存を拒絶された
慰めは心に響くことなく霧散した
悲嘆の波は繰り返し襲い自らを貶めた
母は深甚な自責の念に縛られる
終わりなき葛藤が始まった
受け入れ難い現実をどう受け止めるのか
忘れがたい記憶とどう向き合うのか
終わりの始まりにどう立ち上がるのか
母の胸に去来する魂の叫び
抱きしめた魂を宿るべき心に置く
抱きしめて魂の宿る場所にそっと身を委ねる
抱きしめる母の元に還ってきた魂と祈りを捧げる
母と子の魂の救済の場はいつの日か訪れよう
〔2026年3月27日書き下ろし。「断腸の思い」の続編。自死した子の母がどう回復への道を歩むのか。物質的存在が消滅したゆえに、母と子の魂の救済があって欲しいと〕
「かさぶた」
心から血を流した
傷ついて
傷つけて
掻きむしった
慟哭の悲痛
悼むことを拒む阿鼻叫喚(あびきょうかん)
薄いかさぶたを剥がす
出来ては剥がす
何度も剥がされる
壮絶な苦闘
悼むたびに心渇く阿鼻叫喚
無情を叫ぶ
涙涸れぬ
涙枯らさず
愛の絶望
悼む深さゆえの阿鼻叫喚
無念を苛(さいな)む
悔いる
蔑む
死生の葛藤
悼むことを抗う阿鼻叫喚
子の自死を受け入れる
かさぶたを愛しむ
かさぶたは癒やす
魂の交わり
悼むことに導かれる祈り
〔2026年3月28日書き下ろし。自死した子を持つ母の慟哭と祈り〕